2003年度前期 IT教育基礎論特論B

第11回: 情報通信とコンピュータネットワーク

■ 概要

   情報通信とは何か、またどのように発展してきたかを学習する。 さらに、コンピュータネットワークの形態について学習する。

■ 目標

■ 目次


■ 講義内容

□ 情報通信

情報通信とは
   情報通信とは、一般に、コンピュータ等の情報機器を通信回線で接続し、 (デジタル)信号を送受信することである。 ここでいう情報機器とは、汎用計算機やPCなどのいわゆるコンピュータだけでなく、 各種コンピュータ周辺機器、PDAや携帯電話、デジタルテレビなどを広く含めて 考えることが多い。 また通信回線も、電話線やイーサケーブル、無線など多岐にわたる。
コンピュータと情報通信の発達の歴史
1950年代以前   コンピュータの発明
1939年 アタナソフ、ベリーによるABC機械の開発
世界最初のコンピュータと言われる。実用化ならず。

1946年 モークリー、エッカートによるENIACの開発
世界最初の電子式汎用コンピュータ。 ABC機械を参考に開発されたとと言われる。

1950年代   汎用コンピュータの発展
バッチ処理により、コンピュータ単体で使用される。

1956年 富士フィルム(岡崎文次)によるFUJICの完成
日本で最初のコンピュータ。レンズ計算等に使用。

1958年 東北大学(大泉充朗、野口正一)と日本電気によるSENAC-1の稼動
パラメトロン素子を使用した 日本で最初の浮動小数点四則演算機能を持つコンピュータ。

1960年代   TSS(タイムシェアリングシステム)と コンピュータネットワークの開発
1つのホストコンピュータを電気的に接続された複数の端末から利用。

1962年 MITのLickliderによるCTSS(Compatible Time Sharing System) の開発。
TSSの原型。

1969年 米国防総省によるARPnetの開発。
コンピュータ同士を回線接続した現在のインターネットの原型。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、 ユタ大学、スタンフォード研究所の4台のコンピュータを接続。

1970年代   コンピュータネットワークの発展と インターネットの開発
1970年 ハワイ大学のNorman AbrahamsonによるALOHAnetの開発

1973年 XEROX PARCのBob MetcalfによるEthernetの開発
レーザプリンタと複数のコンピュータとの接続を目的とし、 ARPnetおよびALOHAnetを参考として開発。

1974年 Vint Cerf、Bob KahnによるTCP/IPの提案

1980年代   インターネットの発展
1982年 ARPnetがTCP/IPを採用。

1983年 TCP/IPによるARPnet開始。

1984年 JUNET(Japan Unix Netowork)創設。
慶応義塾大学、東京工業大学、東京大学を電話回線によるUUCPで接続。

1988年 東北大学学内ネットワークTAINS完成。
日本の国立大学で最初の学内ネットワーク。 当時はTCP/IPではなくOSIを採用。

1989年 CERN(欧州素粒子物理学研究所)のTim Berners Leeによる WWWの提案。

1990年代   インターネットの普及
WWWの普及によるインターネットの一般家庭への普及が加速。

1990年 CERNによる世界初のwebサーバおよびwebブラウザの開発。
UNIXシステム上のX Window System用に開発され、 UNIXを利用する研究所や大学で急速に普及。

1994年 バーナーズ・リー、W3Cを設立。

1994年 Netscape社設立。
同年、Netscape Navigator 1.0をリリース。

1994年 Microsoft社がInternet Explorer 1.0をリリース。

1999年 NTTドコモがi-modeを開始。

□ コンピュータネットワーク

ネットワークトポロジー
   コンピュータネットワークは、 コンピュータ等の複数の情報機器を相互接続した情報通信ネットワークであり、 現在のコンピュータネットワークは、 インターネットに代表されるように複数のネットワークを相互接続した 巨大なネットワークを構成するが、 その基本要素は、数台の情報機器を接続した簡単なネットワークからなる。

   このコンピュータネットワークは様々な接続形態をなし、 この接続形態のことをネットワークトポロジーと呼ぶ。 代表的なネットワークトポロジーにはスター型、バス型、リング型などがある。

   スター型ネットワークトポロジーでは、 中央に配置されたスイッチングハブなどの回線制御装置から 放射状に伸びた回線によりコンピュータを接続する。 接続が容易な反面、データ量が増大した場合、 回線制御装置に大きな負荷がかかる。
図1: スター型

   バス型ネットワークトポロジーでは、 一本の回線を複数のコンピュータで共有する。 安価なコストでネットワークを構築できる反面、 データ量が増大した場合、回線が混み、 十分な通信速度を得られない。
図2: バス型

   リング型ネットワークトポロジーは、 光ファイバケーブルを利用したFDDIなどに利用される。 バス型と同様、一本の回線を共有するが、 どこか一箇所が断線しても利用できるといったメリットがある。
図3: リング型

ネットワーク接続装置の種類
   ネットワークに情報機器を接続したり、 ネットワーク同士を相互接続したネットワークを構築する場合、 そのためのネットワーク接続装置が必要となる。 ここでは、その主なものを挙げる。

リピータ
ネットワークケーブル同士を接続するための装置。 片方のネットワークケーブルに流れてきた信号を もう片方のネットワークケーブルに転送する。 ネットワークの延長等に使用し、経路制御は行わない。

ハブ
複数のネットワークケーブルを接続し、信号を分配する装置。 一本のネットワークケーブルに流れてきた信号を 残りのネットワークケーブルに転送する。 複数の情報機器をネットワークに接続する際に使用する。 ただし、経路制御を行わないため、 通信量の多い現在は輻湊の問題があり、ほとんど利用されておらず、 替わりにスイッチ機能を有するスイッチ(スイッチングハブ)を 利用することが多い。

ブリッジ
2つのネットワークを中継する装置。 一方のネットワークに流れてきた信号の転送の必要性の有無を判断し、 転送の必要性がある場合には転送を行う。

スイッチ
複数のネットワークケーブルを接続し、信号を転送する装置。 一本のネットワークケーブルに流れてきた信号を 転送先に応じて回線を選択し、転送する。 回線の選択方法に応じてL2スイッチ、L3スイッチなどの種類がある。 一般に、L2スイッチの安価なものをスイッチングハブと呼ぶことが多い。 またL3スイッチはルータとも呼ばれる。

ルータ
複数のネットワークを相互接続する装置。 ネットワークケーブルに流れる信号の内容に応じて、 どのネットワークに転送するかを判断し、 また、必要に応じてその信号を加工し、信号を転送する。


Last modified: Fri Jul 04 16:01:43 JST 2003